やっと見つけた ayurclothの縫製工場。辞めずに続けるということ

奥湯の郷 湯布院

縫製工場を探して、苦節?1年以上。

遂に、ayurclothの縫製工場が見つかりました。

本当に、嬉しいです。

工場見学に伺い、営業担当の方にお話しを伺うことが出来ました。

頑張る国内縫製工場。とにかく辞めずに続けること。

縫製工場長

お話しを伺ったKさんは、この業界30年。

厳しい状況も乗り越え、今も内職縫製職人をまとめ、受注を受け、仕事に奔走されています。

元々は、手広く服飾品の卸し業をされていた方です。

全盛期は、300人以上の内職縫製職人を抱えておられたそうです。

安い縫製工賃を求めて、中国へと縫製の現場が移った頃が、第一の試練の時期。

厳しい時期を乗り越えたのもつかの間、更にガクンと受注が減ったのが、リーマンショックの時期だったそうです。

リーマンショックが、地方の小さな縫製工場にまで影響を?

メイン顧客だった卸し先の洋服の小売店が、リーマンショックを契機に、バタバタと店を畳んだそうです。

リーマンショック以降、洋服自体が売れなくなってきたとのこと。

リーマンショック以前から見られた、販売形態の移り変わりも影響したと考えています。

「それまでは、小売店から洋服を買う層のお客さんもいた。でも、最近は、何でもネット通販でしょ?小売店では、洋服が売れなくなっちゃったみたいなんだよね。」

細々とでも、今まで定期的に発注のあった小売店がどんどんなくなってしまい、頭を抱えたそうです。

それでも、ここで辞めてしまったら、内職の縫製職人たちに仕事をあげられなくなる。

社長と二人、自分たちの給料は無くても良いからと、工場を畳むことだけはせず、続けてきました。

小ロットにも対応し始め、ここ数年は、小規模事業者からの受注も増え、数は少ないながらも定期的な発注もあるそうです。

私にも「最初からあまり無理しないでいいから、長く続けて下さいね。」と言って下さいました。

最初からガツンと大口の発注をする業者は、1年後にはもう続けられないケースをたくさん見てきたと。

縫製工場の立場からすれば、とにかく長く続けて貰って、コンスタントに仕事をくれるのが一番望ましいそうです。

「忙しいのはいいけど、仕事がない月があったりすると、とても寂しい。」と言います。

どんな方々が縫製して下さっているの?

全盛期は、300人以上の内職縫製職人を抱えておられたのですが、今は十分の1以下に減ったそうです。

内職縫製職人の年齢層は、50歳〜上はなんと84歳まで!

仕事を回さないと、84歳のお婆ちゃんから「ボケちゃうよ。」と、電話がかかってくるそうです。

もう何十年もの付き合いで、気心の知れた間柄。

名前も名乗らず、開口一番「ボケちゃうよ。ねぇ、やることがないじゃないの。」と怒られてしまうそうです。

「お婆ちゃん、今日は1月2日だよ。お正月くらいは休んだらどうだい?」と言うと、

「年末と元旦は皆んなが家に集まってくるからいいけど、2日になったら、もう皆んな帰っちゃったからね。やることないんだよ。」と返されるそうです。

別の80歳の縫製職人さんに「お婆ちゃん、もう針の穴が見えないんじゃない?のんびりしてもいいんだよ。」と言うと、

「あんた、馬鹿言っちゃいけないよ。見える見えないなんか関係ないんだよ。勘だよ、勘。長年やってりゃ、ここだっていうのはスッとわかるもんだよ。」と言い返されてしまうそうです。

縫製職人さんたちは、内職ながら、皆さん、工業用ミシンを使われています。

「家庭用ミシンじゃ、全然ダメ。職業用ミシンでもちょっとダメだね。工業用を持ってる職人は、それなりの経験もあるし。やはり工業用ミシンだね。」とKさんは言います。

他に、ロックミシンが得意な縫製職人さんや、手縫い専門の縫製職人さんもおられます。

どの縫製職人さんに、どんな仕事を振るか。

Kさんは、一人一人の縫製職人さんの能力、得意不得意、希望をはっきりと把握しています。

受注があると「この仕事は、あの人に振ろう」と、瞬時に判断できるそうです。

内職の縫製職人たちを束ねるということ

お話を伺っていると、Kさんがしっかりと、内職の縫製職人さんたちの心を掴んでいるのがわかります。

人を仕うというのは、大変なことです。

ましてや、皆さん、ご高齢で、お金のために働いているわけではありませんので、辞めたかったらいつでも辞められる立場です。

「どうやって、職人さんたちをまとめているのですか?」と質問したくなりました。

とにかく怒らないこと、だそうです。

「職人がミスをしても、不良品を上げて来ても、とにかく怒っちゃダメ。」

一回でも怒ってしまったり、喧嘩をしてしまうと、次から気まずくなる。

それで、楽しくなくなって、辞めちゃうからね。

不良品をあげたら、その事を職人自体が一番よくわかっている。

そこで職人を責めちゃったら、職人は落ち込んで、自分はもうダメなんだと思ってしまう。

絶対に怒らないで「じゃあ、この不良をどう修すか。」っていう方に、頭を切り替えさせるのが自分の仕事だから、とKさんは言います。

「お客さんに怒る事はあっても、職人相手に怒る事は、僕は絶対しないよ。」と言います。

縫製職人たちの話しを良く聞いて、日頃から、良い関係性を保っておく事も大切だそうです。

身の上話や、愚痴も聞く。

縫い上がった製品を回収しながら、気軽な世間話しもする。

Kさんの元で、長く働く縫製職人さんが沢山いる理由がわかった気がしました。

縫製職人の高齢化

内職の縫製職人さんたちが、仕事にやりがいを感じておられる事は感じました。

それにしても、50歳〜84歳までとは、縫製の現場で高齢化が進んでいることは否めませんね。

昔の縫製職人たちは、依頼者側の厳しいリクエストを、数多くこなしてきた経験がある。

それは、年齢を経ても変わることなく積み上げられたもので、年を経っても腕がいい。

物を作る職人というのは、そういうものだ。

縫製の現場が海外に移り、プロ意識の高い縫製職人たちが育つ土壌がなかったため、若い世代に技術やノウハウが伝わっておらず、人材が育ちにくい環境にあります。

何より、縫製工賃が安いため、若い人たちは縫製の仕事だけで長く食べていくことが難しく、人材が育ちにくいのです。

インドの機織り業界も、高齢化が進んでいます。

今、現役の機織り職人たちが引退したら、次を担う世代は育っていません。

大変なわりに給料の安い機織りを、仕事にしようという若い人はインドにもいないのです。

あと20年できるかな?というところですね。

20年の間に、どんな風に変えていけるかに、これからがかかっています。

日本製と海外の縫製に、違いがあるのか?

日本製の縫製製品が、海外製と比べて、それほど縫製が良いのか?

正直言って、私は、大きな違いがあるとは思いません。

今や、中国製やベトナム製の縫製製品も、日本製と変わらぬ、もしくはそれ以上のクオリティーにあると思います。

ただ、日本には、まだ、凄い技術を持った小さな縫製工場もある。

そうした縫製工場は、今でもとても忙しそうです。

日本製だから、高品質というわけではないですね。

常に切磋琢磨し、小ロットで、丁寧な仕事をする縫製工場が、オーラのある洋服を作るのではないか?

大量生産の縫製のやり方と、昔のオーダーメイドでは、洋服の裏の処理が違います。

表から見ても、裏から見ても綺麗な処理がされています。

インドの小さな縫製工場に、オーダーで洋服を作って貰ったことがありますが、一枚一枚裁断して、とても丁寧な仕事で仕上げてくれました。

インドでは、男性の縫製職人が、一家の大黒柱として働いている場合が多いです。

インド人男性には、大人になったら自分のシャツをオーダーすることが、大人の男性の象徴みたいなところがあるので、小さな縫製工場や、縫製アトリエがたくさん活躍しているんですね。

日本の縫製工場には頑張って欲しいけど、私は日本製に拘るつもりはありません。

インドでも、日本でも、気持ちよい付き合いができて、心の籠った仕事をしてくれる縫製工場と、ものづくりができたら一番良いと思っています。

私がやりたくないのは、大量生産や数字に左右されて、お互いにキリキリした仕事をすることです。

いくら縫製技術が高くても、意地の悪い対応をしてくる縫製工場とはおつきあいしたくないですね。

お互いに支え合いながら、助け合いながら、ayurclothの物作りをしていきたいと思っています。