日常使いの味噌汁椀で、長く愛用できる良い物を買いたいと2年越しで探し続けてきました。
うちは毎朝、ご飯と味噌汁の朝ごはんを食べるし、味噌汁椀の使用頻度は高いです。
毎日使う物だから、納得して気に入ったものを選びたい。
いろいろ検討して最終的に購入したのが、要明研二さんの漆塗りのお椀です。
気に入ったものを遂に手に入れ、毎日嬉しく使っています。
イトーヨーカドーの300円の木製椀
少々高くても、気に入った良い味噌汁椀を買いたいと慎重になった理由に、それまでに使っていたお椀があまりにも長持ちしてしまったということがあります。
全然、高い物じゃないですよ。
一つはイトーヨーカドーのワゴンセールで購入した、300円の木製のお椀。
これがそこそこ使いやすくて、10年も保ってしまったんです。
物持ちは良い方ですが、まさか300円のお椀を10年も使い続けることになるとは…。
器でも鍋でも、日本で売られているものは、安くてもそこそこの品質のものばかり。
うっかり購入してしまうと、気に入らない、思い入れもない品を何年も使い続ける羽目になる。
味噌汁椀なんかは毎日使うものだから、今度買う時は、少々高くても気に入ったものを買おうと心に決めました。
10年間お世話になった、イトーヨーカドー300円の味噌汁椀。
木製のお椀は、漆塗りじゃないと、裏面がこんな風にカビやすい。
300円の安物なので、おそらくウレタン塗装でしょうな。
木粉の樹脂製合成漆器
次に買ったのが、木粉の樹脂製合成漆器です。
今度は本物の漆塗りのお椀を買おうと思っていましたが、しくじりました。
二代目、木粉の樹脂製合成漆器。このお椀は短命でした。
日光へ旅行に行った時、器のセレクトショップのようなお店で購入しました。
2,500円くらいだったと記憶しています。
その頃は漆器の知識もなく、雰囲気の良いお店で購入したので、本物の漆塗りの良い器を購入したつもりでいました。
よく考えたら2,500円で木製漆器が買えるわけないのですが、その頃は漆器の知識もなく、2,500円の味噌汁椀でも高いと思っていたくらいなので。
使い続けて2年目、なんだかおかしいと思い始めました。
このお椀、縁がボロボロ崩れてくる…。
縁が崩れる木粉の漆器。
特にお椀の裏面は、洗った後水がたまるので、大きく崩れている。
あぁ、いやだ、いやだ。
本物の漆塗りの漆器を買ったつもりが、どうやら木粉の漆器だったと気が付きました。
今度こそ、良い味噌汁椀を買いたい!
そう思った私は、漆器について調べ始めました。
ややこし過ぎる。漆器の種類
調べてみると、漆器には木製の器に漆を塗ったものと、プラスチック製の器に吹き付け塗装をした合成漆器の二種類があることがわかりました。
現代では合成漆器のレベルが非常に上がっており、素人がパッと見で判断するのは難しいようです。
①漆器:木製、プラスチック製問わず、天然漆を塗った製品のこと。
木製漆器は、天然木に天然漆を塗った製品のこと。
②合成漆器:天然漆以外の塗料を塗った製品のこと。
樹脂製合成漆器とは、木粉加工品(圧縮材)やプラスチックに合成樹脂塗料を塗ったもの。
つまり、漆器と銘打たれていても、木製漆器かどうかは定かではありません。
この時点で、木製漆器を選ばなければならないとわかりました。
私が買ったのは、木粉の樹脂製合成漆器だったんですね〜。
だからボロボロ崩れてきたんだ。
あんな物を本物の漆塗りだと思っていたのですから、当時の私は節穴です。
でも最初は見た目では全然わかりませんでしたよ。
圧縮材とは、気が付きませんでした。
更に言うと、漆器は素地に下地を施し、漆を何層にも塗り重ねるのですが、全て国産漆を塗り重ねた漆器は現代では稀で、あっても非常に高価です。
漆以外の塗料を塗り重ね、最後の仕上げのみ天然漆を使用した器もあります。
また、漆塗のほとんどが中国製の漆を使用しており、国産漆を使った漆塗は少なくなっています。
この時点で、木製漆器で、なおかつ国産の天然漆を使った味噌汁椀が欲しくなりました。
国産天然漆の木製漆器を探す
いろいろ調べて、猪狩史幸さんの漆塗りのお椀がいいなと思うようになりました。
猪狩史幸さんは、岩手県で暖かい季節は山に入って漆を掻く、漆掻き職人です。
寒い季節には、漆塗りの漆器を作る作家さんでもあります。
ご自分で掻いた漆で、漆器を作られているところに魅力を感じました。
何より、画像越しにも漆の艶が感じられる猪狩史幸さんの漆器に惹かれました。
これは是非、実物を見て、触って、購入したい!
都内の器のセレクトショップに問い合わせてみたのですが、全てsold outで次回の入荷予定も未定。
しばらく探してみたのですが、全然見つからない。
お値段もそこそこお手頃で、長く使う事を思えば、予算内の漆器でした。
★猪狩史幸さんの漆器のお値段
・初椀:11,880円(直径:13㎝・高さ8㎝)
・盛椀:10,584円(直径:12㎝・高さ7.5㎝)
・末椀:9,612円(直径:11.5㎝・高さ6.5㎝)
猪狩史幸さんの漆器、欲しかったけど、ご縁がなかったわ。
次に心が動いたのは、漆塗りなしの銘木椀です。
薗部産業の銘木椀
薗部産業は神奈川県小田原市の地場産業である「小田原木製品」を基にものづくりをしておられる企業さんです。
セレクトショップでぽってりした可愛いフォルムのお椀を見つけ、惹きつけられました。
店員さんに聞いたら、薗部産業の銘木椀とのこと。
素材も様々で、栗、桜、ケヤキ、ぶな、くるみ、なら、と選べます。
これは素敵!これにしようかなと心が動きました。
お値段も一つ4,000円くらい。
オーガニック・カフェなんかで、よくこういう器を使われてますよね。
ナチュラルな雰囲気が素敵。
でも待てよ…。これ、ウレタン塗装だ。
お味噌汁のお椀は、毎日、熱々の味噌汁を入れるものです。
ウレタン塗装は避けたいなぁ。
更に決定的に銘木椀はやめようと思ったのが、木製箸を使ってからでした。
一生ものの箸にしようと買った、木製のお箸。
使用後、一ヶ月で黒っぽく変色してきた。
頻繁に使う味噌汁椀は、頻繁に洗うことになります。
洗った後、干した時に、どうしてもお椀の裏に水が溜まって、そこから黒く変色してきます。
やはり塗り物のお椀に限る。
木の食器は雰囲気があって素敵だけれど、水に弱いという弱点があります。
ここで原点に帰りました。
やっぱり国産天然漆の木製漆器を買おう!
実物を手にとって見ましたが、薗部産業の銘木椀は、大きさと形がとても良かったです。
薗部産業の銘木椀のような形と大きさの、漆塗りの漆器がいいなと思いました。
要明研二さんの漆塗り椀
要明研二さんの漆塗り椀は、高島屋で購入しました。
前述のように、漆器は素人目には合成漆器なのか、木製漆器なのか、さらには塗装は本漆なのか、見た目で判断するのは難しいです。
ましてやネット通販の画像では、言わずもがな。
百貨店なら漆器の種類も豊富ですし、手にとって触って重さや大きさを確認することができます。
有能な店員さんに当たれば、塗りの説明も受けられます。
百貨店では一客5万円とかの漆器も勧められましたが、予算外のものは眼中ないよの姿勢で押し通しました。
いくらなんでも、日常使いで5万の漆器は緊張するわ。
私の予算は一客1万円〜1万五千円まで。
見つけたのが要明研二さんの漆器です。
石川県の山中塗で、要明漆芸工房とも言うようです。
ちょうどセールの時期で、一客5,000円の漆器と、一客6,000円の漆器、二つ購入しました。
元はもうすこし高かったんだと思う。ラッキーでした。
サイズは直径11.5㎝・高さ7.5㎝。
豚汁のような具沢山汁にも使えるし、普段のお味噌汁を入れるにも良いサイズです。
形は薗部産業の銘木椀に似て、お椀の下の方がぽってりしています。
木製の器は、熱いものを入れても手に響きません。
この辺りが合成漆器との違いですな。
見かけは同じでも、使ってみると違いが出てきます。
要明研二さんの汁椀の裏側。赤い判子のようなものが。
要明研二さんは石川県山中漆器のふる里で、塗師屋さんの家に生まれたそうです。
明治生まれのお父様から、漆クロメ(精製)から、下地塗、中塗、上塗まで学んだとか。
要明研二さんのこだわりとしては、下地塗には堅地(生漆と地の粉と砥の粉を練り合わせた物)、もしくは惣身(生漆と欅の木の粉と米糊を練り合わせた物)を施す。
中塗・上塗には、要明研二さん自らがクロメた国産漆を使ってあるそうです。
お値段がお値段ですので、全てが国産漆ではありませんが、科学的な塗料は使われてないようです。
何より、上塗にご自身が掻いた国産漆を使われているところに、作家さんの真心を感じます。
要明研二さんの漆器を使い始めて一年経ちましたが、扱いやすいし、美しいし、本当に気に入っています。
漆器は高価だし、扱いづらいから、日常使いにはちょっとという方も多いと思いますが、全然そんなことないですよ。
洗剤で洗わず、水に漬けっぱなしにしないこと。
固いものを上に重ねないこと。
気をつけるのはこれくらいでOK。
すぐに水滴を拭かなきゃダメだとかいう人もいるけど、ちょっと水滴がついたまま干しておく程度なら全く問題なし。
作家物の器って、本当にいいですよね〜。
大量生産品とは、佇まいが違います。
それに作家ものの食器って、手が届かないほど高価じゃないですよ。
作家さんを応援する意味も込めて、器はオリジナリティーのある、気に入った物を一つずつ揃えていきたいと思っています。
次に探しているのは醤油差しと、木製のトレイとお箸です。
少しずつ、お気に入りが増えていくのは嬉しいですね!
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