アーユルヴェーダ・ドクター インタビュー Dr.S.Mahesh ( BAMS)

アーユルヴェーダ ドクター

トリバンドラムのアーユルヴェーダ施設、Mitra Hermitage Ayurveda Hospitalのチーフ・ドクターである、Dr.S.Maheshにインタビューさせて頂きました。

Dr.S.Maheshは長年に渡りスイスのクリニックでも勤務経験があり、英語が堪能なだけでなく、穏やかなお人柄と的確な治療アドバイスで、Mitraの患者さんにも大変評判の良いアーユルヴェーダ・ドクターです。

パンチャカルマ治療を受けるにあたり、常々私が疑問に思っていたことについてDr.S.Maheshに質問してみました。

「アーユルヴェーダとは?」というような、ネットで調べればわかるようなことは質問せず、パンチャカルマ中に私が疑問に思ったことを伺いましたので、具体的に役立つ内容になっていると思います。

これからパンチャカルマを受ける方のお役に立てば幸甚です。

①Mitra Hermitage Ayurveda Hospitalを設立したきっかけを教えて下さい。

Mitra Hermitage Ayurveda Hospitalは、2009年11月に設立されたアーユルヴェーダ施設です。

Mitra Hermitageは1994年に私が父と共に始めた、Mitra Ayurvedic Research Centerが基になっています。

②アーユルヴェーダ・ドクターになったきっかけを教えて下さい。

12年生の時、私は現代医学、歯学、アーユルヴェーダ・ホメオパシーのいずれかの学部を選択しなければなりませんでした。

私の家は4代続くアーユルヴェーダ医師の家系で、私はアーユルヴェーダについての強いバックグラウンドを持っていましたので、自然とアーユルヴェーダ学部を選択しました。

1986年には国家試験をパスし、国立アーユルヴェーダ大学に入学しました。

大学には1986年〜1992年まで在籍し、1993年に研修期間を終えました。

その後、1998年〜1999年にかけて病院経営を学び、Post graduate diplomaを取得しました。

③先祖代々続く、アーユルヴェーダ・ドクターの家系だそうですね。

私は4代続く、アーユルヴェーダ・ドクターの家系に生まれ育ちました。

私の妻もアーユルヴェーダ医師で、妻の父もまたアーユルヴェーダ医師です。

私の叔父も、アーユルヴェーダ医師です。

私は幼い頃から、深くアーユルヴェーダに関わる環境の中で育ちました。

私がアーユルヴェーダ医師になることは、運命づけられてたと感じますね。

Mitra Hermitage

Dr.S.Maheshのご親族。全員がアーユルヴェーダ・ドクター

④どのような方々がMitra Hermitageの顧客ですか?

設立当初は、インド、スイス、ドイツ、オーストリアからの患者様に多くおいで頂きました。

その後、口コミが広がり、現在では様々な国の方がおいで下さいます。

患者様の症状は、様々です。

アレルギー疾患、不安神経症、関節炎、腰痛、首の痛み、肝臓障害、糖尿病、偏頭痛、慢性疲労症など様々です。

化学療法を長年続けて効果が出なかった患者様が、アーユルヴェーダ治療を試みに来られることも多いですね。

特に病気でなくても、ストレス解消、体調を整える目的で来られる方もいらっしゃいます。

⑤パンチャカルマ治療は、身体的なデトックス効果が非常に高いと実感しています。
 心理的な原因からくる症状にも、パンチャカルマは効果がありますか?

アーユルヴェーダでは、身体的、心理的、精神的、全ての側面からの治療アプローチをします。

だからこそ、長い目で見て効果が出るのです。

西洋医学との違いは、ここにあると言えます。

単に肉体的な病気を治療するだけでなく、その治療過程において、精神状態を整え、安定させる事により、メンタル的な治療効果をもたらします。

肉体と精神は繋がっているので、切り離して考えることはできません。

パンチャカルマは、身体の細胞レベルからのデトックス治療です。

治療に集中できる環境でパンチャカルマを正しく受けることで、穏やかで安定した精神状態のまま肉体的なデトックス治療を施す事ができます。

短期間のアーユルヴェーダ・トリートメントでは、細胞レベルからのデトックスはできませんが、リラックス効果と身体のケアが可能です。

⑥パニック障害、鬱病、摂食障害、過食症、拒食症のような病気や、乳がん、アトピー性皮膚炎、リンパ腫などの治療経験はありますか?

ほぼ全ての症状の患者様の治療経験があります。

特に、濾胞性リンパ腫の症例では、大きな効果を出す事ができました。

鬱病、不安神経症などのケースでは、規則正しい食事。滋養のあるベジタリアン料理とヨガが治療に大きな意味をもたらします。

一番大切な事は、パンチャカルマ治療後の過ごし方と、病気の原因となるライフスタイルを変える事です。

パンチャカルマ終了直後にすぐ治療効果を実感できるというより、パンチャカルマ治療後、2〜3ヶ月の過ごし方を安定させる事で、治療効果が徐々に出てくるケースが多く見られます。

最終コンサルテーションでは、病気の原因となるライフスタイルを変化させるためのアドバイスを行っています。

また、患者の症状の深刻さに応じて、2〜3ヶ月分の薬を処方します。

薬を飲むタイミングは、とても大切です。

食前、食後、寝る前、起床後すぐなど、決められた時間に薬は飲むようにアドバイスします。

パンチャカルマ後、帰国後、徐々に好転反応が見られるケースもあります。

そのためMitra Hermitageでは、パンチャカルマ終了後もeメールによる相談を受け付けています。

⑦パンチャカルマ治療中に、患者が気を付けるべき事はありますか?

パンチャカルマは身体の奥深くにアプローチする、デリケートな治療手法をとります。

そのため治療は段階的で、準備段階、デトックス治療、後処置の順に行われます。

パンチャカルマは穏やかな精神状態を保てる環境である事、規則正しく消化に良い滋養のある食事を摂る事が大切です。

パンチャカルマ後は、ドクターのアドバイスに従い、病気の原因となる食生活やライフスタイルを変える事で、本来の治療効果が発揮されます。

アーユルヴェーダ医師の役目は、そのドアを開け、患者がより良い健康な生活への新しい道を開くきっかけを作る事だと考えています。

パンチャカルマは、魔法の治療法ではありません。

あくまでも患者自身が、自発的に治そうという気持ち、自分自身を見つめ、病気の原因となる考え方やライフスタイルを改善する事が大切です。

パンチャカルマと観光旅行を並行する事は、望ましくありません。

あくまでも治療に専念する事、またテレビを観たり、パソコンやスマートフォンを長時間見過ぎない事。

他人に気を遣いすぎず、リラックスしながらも自分を見つめる時間を持つ事が大切です。

自然に囲まれた環境の中、ゆったりと読書をしたり、リラックスできる音楽を聴いたり、適度なヨガをするのも良いでしょう。

治療中はドクターのアドバイスに従い、不安な事があれば何でも質問して下さい。

⑧パンチャカルマを受けるにあたり、何日間の治療期間を取れば十分だと思いますか?
1週間、2週間、3週間の治療期間では、何が違いますか?

パンチャカルマ治療には、最短で2週間の治療期間が必要です。

アーユルヴェーダのプロトコールに従って行う事ができる、準備段階と浄化のプロセスには、ミニマム2週間の期間が必要だからです。

症状が慢性的だったり、深刻な場合は、3週間〜4週間の治療期間が必要となります。

治療期間が長ければ、施せる治療メニューが増えますので、2週間より効果はさらに上がります。

デトックス処置は連続して行う事ができず、必ず間に身体を休める期間が必要となります。

そのため、本格的なパンチャカルマ治療には、ある程度の治療期間が必要となってくるのです。

1週間のプログラムでは、本格的なパンチャカルマを段階的に施す事はできません。

もちろんリラックス目的で、短期間のアーユルヴェーダ・トリートメントを受ける事はできますが、それはパンチャカルマ治療とは言えません。

⑨なぜ、パンチャカルマは雨季に受けると効果的なのですか?
ケララの雨季はいつですか?

パンチャカルマは、暑すぎる時期以外のいつでも受ける事ができます。

特に雨季は、身体の不調が現れやすい時期で、主に神経系の疾患、関節炎など、ヴァータの乱れからくる病気を誘発します。

ヴァータ・ドーシャは、誰にとっても非常に大切です。

ヴァータの乱れは、ピッタとカパの不調和にも影響してきます。

ケララでパンチャカルマを受けるなら、雨季が特にオススメです。

その昔、ケララの一般市民の間では、大雨の時期に休暇をとる事が習わしになっていました。

これはアーユルヴェーダの知恵からくるもので、雨季の時期に安静にする事が体調管理に大切だと言われてきたからです。

ケララは真夏でも暑過ぎず、インドの中では一年中穏やかな気候で、緑に囲まれた土地です。

パンチャカルマを受けるには、最適な土地柄です。

ケララの雨季は、6月〜9月です。

⑩パンチャカルマ中に、眠くなることがあります。昼寝をしてもいいですか?

治療中は心が穏やかになり、リラックスするため、眠気が出るのは自然なことです。

しかし昼寝はカパを増やし、身体の詰まりを誘発し、トリートメント効果を下げます。

眠くても昼寝はしないようにして下さい。

昼間に眠くなったら、散歩をしたりして気晴らしするようにしてみて下さい。

⑪薬用ギーを飲むと、どのような作用がありますか?
 薬用ギーを飲む時に、たくさんのジンジャー・ウォーターを飲むのはなぜですか?

薬用ギーは、禁忌ではない患者に処方することができます。

人間の体内の毒素の90%が脂溶性です。油は油で排出することができます。

温めた薬用ギーを処方することで、ギーは細胞膜を通過して身体のあらゆる細胞にとどきます。

薬用ギーに含まれる植物の活性成分は、細胞を飽和させ、その後、それらを解毒することができます。

薬用ギーは重い性質を持つため、消化が容易ではありません。

そのため、温かいジンジャー・ウォーターをギーと並行して飲むことで、消化しやすくし、身体の詰まりを防ぐのに役立ちます。

⑫ナスヤ・トリートメントにはどのような効果がありますか?

ナスヤは身体における喉から上の部分(つまり喉を含めた頭部)に関係するトラブルを治すために施される治療法の一つです。

簡単に言うと、ナスヤは目、耳などの中枢神経系や脳に働きかけます。

偏頭痛、鼻炎、疲れ目などの目のトラブルに効果があります。

また鬱や不安症などの治療にも、ナスヤは効果を発揮する場合があります。

アーユルヴェーダでは、ナスヤは頭部に関する健康問題を治療するには、最もポピュラーな治療法です。

⑬パンチャカルマ中に生理がきたら、トリートメントは休んだ方が良いですか?

パンチャカルマ中に生理がきた場合は、全ての主要なトリートメントをストップする必要があります。

生理中の患者は、安静に過ごす事が大切です。

パンチャカルマは、生理期間を避けて受けた方が良いでしょう。

⑭不妊治療はどのようなアプローチでなされますか?

不妊治療には、3ヶ月〜数年の長期に渡る治療手法をとります。

不妊治療前に、体細胞を浄化して、卵子と精子の質を向上させるトリートメント・メニューを組みます。

不妊治療はパンチャカルマの最終段階で開始され、パンチャカルマ終了後のコンサルテーションで処方される妊娠率を上げる薬を継続して摂るようアドバイスします。

また妊娠しやすい身体作りに良い食べ物や、ライフスタイルについてアドバイスしますので、治療後の過ごし方が大切になってきます。

同時に患者のメンタルの保ち方も、大切なポイントです。

⑮今後の展望を教えて下さい。

施設内で、アーユルヴェーダ講座を開きたいですね。

それから新鮮な乳製品や有機野菜を提供するための、自家農園も作りたいと思っています。

最終目標は、あらゆる点において、自家製のものを提供できるアーユルヴェーダ施設になることです。

しかし、あくまでもMitra Hermitageは、伝統的なアーユルヴェーダの原則に則ったアーユルヴェーダ治療院であることを守り続けていきたいと思っています。

リゾート施設のようなビジネス・アーユルヴェーダに走ることなく、さらに進化していくことを常に念頭に置いています。

Mitra Hermitage

奥さんもアーユルヴェーダドクター。奥さんはMitraのオーナーでもある。

 

今回のインタビューでは、私が常々パンチャカルマ中に疑問に思っていたことを質問してみました。

特に、苦痛を感じる嫌いな施術については、施術の理由を伺ったお陰で「この施術が何の意味があるか」を理解でき、トリートメント中の苦痛が軽減されるというか、納得して施術を我慢できるようになりました。

私の場合は、薬用ギーを飲む期間とナスヤが苦痛だったので質問してみたのですが、やはり意味があってなされる施術だと思うと、不味いギーも我慢できるというものです。

またパンチャカルマ中はやたらと眠くなり、暇なのもあって昼寝をしたいものなのですが、昼寝は我慢した方が良いんですね。初めて知りました。

これからパンチャカルマを受けられる方に、少しでも参考になれば嬉しいです。