アーユルヴェーダ染めと、日本の草木染め。
どちらも植物を使って、布を染める染色方法です。
アーユルヴェーダ染めと草木染めの違いは?
目次
アーユルヴェーダとは
アーユルヴェーダとは、約5,000年前にインドで発祥した伝統医学です。
インドの古典医学書、チャラカ・サンヒターには、「アーユルヴェーダとは、生命の本来の特徴に基づいて、また幸福と不幸に基づいて、また有益と無益に基づいて、長寿に役立つものとそうでないものを知らしめるからアーユルヴェーダと呼ばれる。」とあります。
要約すると、アーユルヴェーダとは「幸福で有益な人生を送るための智慧の学問である」と言えます。
ヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(水)の三つのエネルギーのバランスが取れていることが、心身ともに健康な状態とされています。
人は皆、各々が違う個性とバランスを持って生まれるため、何が健康で幸福感を感じる状態かというのも、各個人で異なります。
アーユルヴェーダでは、持って生まれた自分の性質を理解し、心身のバランスを整える方法を示しています。
アーユルヴェーダ染めとは?
アーユルヴェーダ染めは、このアーユルヴェーダの理論に基づき、様々な薬草やスパイス、木の根などを配合して布を染める植物染めです。
工房では、一枚一枚、ハーブ液に浸けて手染めしている。
ayurclothの現地染め工房は、インド王朝時代に王族直属のアーユルヴェーダ医師を務めた家系の一族が運営しています。
アーユルヴェーダ医師でもある彼らの先祖は、王族の健康管理のために、アーユルヴェーダ染めの衣服や寝具を使っていました。
日本で、薬を飲むことを「服薬する」とか「服用する」と言います。
衣服の服は、ここから来ているという説もあります。
衣服に薬理作用があることを、昔の東洋人は知っていたのでしょう。
タイのカレン族は、藍染の服を身に纏いますが、藍染の服は蚊や虫を寄せ付けないそうです。
インド王朝時代も、王族たちはアーユルヴェーダ医師が調合した植物染めの衣を纏い、衣服からの薬効を享受していました。
ハーブの森から収穫された、カラフルなハーブたち。美しい。
アーユルヴェーダ染め 二つの特徴
特徴1:アーユルヴェーダの知識に基づいて、アーユルヴェーダ医師が薬草の配合を決める
アーユルヴェーダ染めでは「まず薬効ありき」なのです。
そのため、伝統的なアーユルヴェーダ染めでは、きちんとしたアーユルヴェーダ医師の資格を持つドクターが調合しなければなりません。
どのような色に発色させるか考えると同時に、どのハーブの効能を全面的に引き出すかを考えます。
それによって、メインとなるハーブを決定し、次にメイン・ハーブの効能をサポートするハーブやスパイスの配合を調整します。
インドのハーブやスパイスで染めたから、アーユルヴェーダ染めです、ということではないわけです。
2,000種類以上のハーブやスパイスから、薬効と発色を考えて調合されるアーユルヴェーダ染め。
アーユルヴェーダ医師の資格のない人が、素人判断でできる染めではありません。
フレッシュなハーブの生葉や、木の幹、スパイスなどを染める直前にカットする。
特徴2:多種類の薬草やスパイスを使って、一色の色を出す。
アーユルヴェーダ染めでは、一色の布を染めるのに、40〜60種類の薬草やスパイスを使用します。
黄色の布だから、ターメリックで染めたのか?と思いきや、ターメリック以外にも様々なハーブを配合していることに驚きました。
ayurclothの現地染め工房では、染色以前の漂白や媒染の工程から、多種類の薬草を使用するため、トータルで使用する薬草の種類は、草木染めとは比べ物にならないほど大量となります。
黄色だからターメリック、ピンクだからインド茜と、単純にはいかないのがアーユルヴェーダ染めの複雑さと奥深さです。
インドの言葉で、自然の神様に捧げる祈りの歌を歌いながら、薬草を煮出していた。
アーユルヴェーダ染めと草木染めの違い まとめ
伝統的なアーユルヴェーダ染めでは、アーユルヴェーダドクターの資格を持つ人だけが、薬草を調合することができます。
草木染めは、誰もが楽しめる植物染めです。
その時々の、庭の花や野草で、その時々の色出しを楽しめるのが草木染めです。
アーユルヴェーダ染めは、まず「薬効ありき」です。
薬効を考えてメインハーブを決め、次にサポートハーブを調合します。
植物から、どんな効能を引き出すか考えると同時に、どんな色が引き出されるかを考えます。
草木染めの場合は、まず「色ありき」です。
どんな色に染めたいのか、どんな色が引き出されるのかを期待して染めます。
薬効はそのあと、ついてきます。
もしくは、特に薬効はないが、色は綺麗というものもあります。
アーユルヴェーダ染めでは、一色の布を染めるために、40〜60種類のハーブやスパイスを使います。
草木染めでは、それほどまでに多くの植物で、一色を出すことはありません。
単体、もしくは数種類の植物で、一色の色を出します。
または、媒染剤を変えることでも、様々な色出しを楽しめます。
アーユルヴェーダ染め、草木染め、それぞれに良いところがありますね。
ただ、日本の藍染だけは、私は特別なものだと感じています。
インドのインディゴ染めの布も手に入れましたが、やはり色の深さ、美しさ、精度の高さ、どれを取っても日本の藍染には及ばない、というのが感想です。
日本の藍染もいろいろありますので、一様に全て素晴らしいというわけではないのですが、薬剤を使わない本当に手間のかかる昔ながらの藍染は世界一です。
残念なのは、藍染される生地に良いものがないことが惜しいですね。
せっかくのクオリティーの高い日本の藍染なら、無農薬綿花を手織りした生地を手染めできたなら、最高の藍染になりそうです。
今の日本では、無農薬綿花を手織りした生地は、趣味で機織りでもしない限りは入手困難です。
→ayurclothの協力者たち 高齢者の方々の手を借りての商品開発
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