南インド工房の機織り職人にインタビュー 職人たちの労働環境を視察する。

手織り職人

ayurclothの現地機織り工房で働く職人の皆さんが、どのような労働環境で働いているか視察してきました。

一見すると、手織りとは思えないほど細かい目で織られたayurclothの布たち。

どんな方々が手織りしているのか?

搾取的な環境にいることはないか?

機織り職人さんに、直接インタビューする機会を頂き、現場の状況をリアルに知ることができました。

今回、視察したのは、現地NGOが管轄するSHGの中の一つの機織り工房です。

→SHG(Self Help Group)とは?

クリシュナさん(53歳)インタビュー

南インドの機織り

SHGのメンバーで、ベテラン機織り職人のクリシュナさん

①機織りの仕事を始めて何年になりますか?

17歳から機織りを始めて、もう35年間この仕事を続けています。

今まで、機織り以外の仕事はしたことがありません。

他の仕事をするチャンスも余裕もありませんでした。

これからもずっと、私は機織りを仕事としてやり続けていくと思います。

②仕事にやりがいを感じますか?

長くこの仕事を続けていますので、今では手が自然に動き、上手に機織りができるようになったと思います。

綺麗に早く仕上がった時は、嬉しいですね。

生活のために働いていますが、やりがいも感じます。

2人の子供達に教育を受けさせる事が出来たのが、私の誇りです。

生活は楽ではありませんが、子供達のために自分が役になっているという事に満足しています。

③将来の夢を聞かせて下さい。

2人の子供達が幸せに、良い暮らしをしてくれたらと思っています。

娘には、良い人と結婚して欲しいです。

生活の苦労をせず、暮らせるくらい、金銭的に余裕がある男性と結婚してくれたら安心です。

息子には、医者になって欲しいです。

リラさん(48歳)インタビュー

手織り

SHGのメンバーで、機織り職人のリラさん

①機織りの仕事を始めて、何年になりますか?

18歳の頃からこの仕事を始めて、もう30年になります。

SHGが設立された当初からの、初期メンバーです。

機織り以外の仕事をしたことがないので、これしかできないのですが、ずっと続けています。

24歳で結婚して、子供が2人います。

2人とも、女の子です。

夫は木こりですが、身体が弱く、病気がちで、時々仕事を休まなければなりません。

夫の給料だけでは、家族4人が生活するのは難しいため、私が機織りの仕事で家計を助けています。

②仕事にやりがいを感じますか?

機織りの仕事が楽しいというより、この仕事しかやったことがないので、自分はこれしかできないと思っています。

長くこの仕事を続けていますので、これが私のできる事だという気持ちはあります。

働くのは、やはり生活のためです。

2人の子供達に教育を受けさせるため、結婚させるにもお金が必要ですから、私が働かなければと思って続けてきました。

生活は楽ではありませんが、子供達のために自分が役立っているのですから、働く事は苦ではありません。

③将来の夢を聞かせて下さい。

2人の娘達が、良い男性と結婚することが私の夢です。

娘達の将来のため、教育を受けさせること、結婚資金を作ることが、今の私の生きがいになっています。

娘達には、苦しい生活をして欲しくありません。

娘達がお金持ちと結婚して、幸せになってくれることが私の夢です。

南インドの機織り職人

女性だけでなく、地元の男性機織り職人にも、雇用の機会を提供している。

インタビューを終えての感想

お二人とも、インタビューの最中も手を休めることなく機織りを続けておられました。

シャイで、語彙が少なく、自分の考えや感情を人に説明するのが苦手な印象を受けました。

数人にインタビューしましたが、皆、一様に同じような回答が返ってきました。

機織りは生活のために続けているが、家族の役に立っているということで、やりがいも感じる。

子供たちには、自分たちには受けることができなかった、十分な教育を受けさせたい。

娘には、金銭的に余裕のある男性と結婚して幸せになって欲しい。

息子には、医者になって欲しい。(インドでは、医者が良い仕事の代名詞なのか、判で押したように、全員が息子に医者になって欲しいと言いました。)

日本の機織り職人さんたちのように、仕事と技術にプライドを持ち機織りをしているという感じではなく、生活のためにという意識ではありますが、一生懸命に仕事をしているという印象です。

そして、学歴や資産のない彼女たちには、機織りの道しかない。

機織りによって、彼女たちは自分と家族の生活を守っている。

一昔前、戦後世代の日本人の母親たちも、こんな風に家族の子供の幸せのために、生きていたのかなと思いました。(今も、そうだと思います。)

子供に習い事をさせたり、大学に行かせるために、やりくりして生きているのは、今の日本も同じですよね。

ayurclothの現地機織り職人たちは、自分の働きに見合った対価を得て、逞しく生きていました。

南インド機織り産業の現状

シリカ糸を手織り

中国から輸入しているシリカ糸で手織りされた布

この工房では、綿ではなく、シリカ糸を手織りしていることに驚きました。

SHGでは、機織り職人の自立サポートをメインの目的としているため、全ての手織り工房が、オーガニックコットン生地を手織りしているわけではないそうです。

今回、取材した工房では、中国から輸入した化学繊維のシリカ糸を使って、インドの公立小学校の制服に使う布を手織りしていました。

インド政府の援助で、公立小学校の制服に使う生地を、この工房では任されているとのこと。

インドでは、小学校の制服が非常に高価なのですが、この工房で織った生地で作られる制服は、一部の小学校に無料で支給されています。

化学繊維をわざわざ手織りしているというので、私から見るともったいない気がしました。

せっかく手織りするなら、天然の綿や麻の糸を使ったら良いのではと思いましたね。

インドでも、オーガニックコットンは貴重で高価なため、無料で支給する制服には使用できないとのことでした。

それでも公立小学校の制服の仕事を得たことで、機織り職人たちは継続的に安定した工賃を得ることができます。

手織り産業を守るための、苦肉の策なんですね。

私たち日本人にとっては、手に入りにくいオーガニックコットンの手織り生地を提供して貰えるのは嬉しいことですし、現地の機織り職人たちにとっては、自分たちの織った手織り生地の需要があることはありがたいことです。

手織り生地を購入することが、機織り職人たちの生活を守ることに繋がっているのもわかりました。

しかし、若い職人さんたちは、1人も居ないようでした。

継承者の減少は、インドでも深刻です。

→現地NGO代表 Dr.K.Rajanインタビュー 伝統的なアーユルヴェーダ染めを守る使命