最初にヴィパッサナー瞑想の10日間コースに参加してから、5〜6年経ちました。
その後3〜4回、3日間コースに参加しましたが、未だに瞑想ができているとは思いません。
瞑想で特別な体験もないし、集中できる実感もまだないのですが、最初のコースに参加した時よりは雑念が減ってきたと思っています。
私自身には大した体験はないのですが、その時の体験談や感じたことを書いていきます。
ヴィパッサナー瞑想を知ったきっかけ
私がヴィパッサナー瞑想のことを知ったのは、友達の紹介からでした。
その子は英語がペラペラで同時通訳を仕事にしていて、ヴィパッサナー瞑想でもボランティアで通訳などをしていたようです。
時々飲みに行ったり、食事をしたりする仲でしたが、瞑想をしているというような話は出ず、ヴィパッサナー瞑想を勧めてくることもありませんでした。
その頃、私は気まぐれにお寺の座禅会に参加したりしていたのですが、足が痺れるばかりで全く集中できず、自分は全然できないな。こりゃ、ダメだと諦めかけていました。
一方で、人の座禅体験を聞いては、自分もそういう体験をしてみたいと憧れていました。
座禅の人からは「座っていると、遠くの方で聞こえる物音がものすごくクリアーな音に聞こえた。」とか「100m先で針が落ちる音が聞こえるくらい、感覚が鋭くなる時がある。」という体験談を聞きました。
そういう話を聞くと、ひたすら足が痺れるだけの自分が、ただ無駄に座っているような気がしていました。
瞑想には、オーム真理教の件もあり、多少怪しいイメージを抱いていました。
何よりネットで調べた瞑想コースの料金があまりに高かったので、ますます怪しさを感じて近づかなかったんですよね。
中野裕弓さんの本を読んで興味を持ったTM瞑想が、ネットで調べてみたら5日間コースで12万円以上だったと思う。
何でそんなに高いんだ?
自己啓発にそんな料金出すつもりないし、別に病んでるわけじゃないし、悩みもないし、これはないわ。
ありえませ〜ん。却下。
それで瞑想には近づかない日々が続いていたのですが、友達に「時々、お寺の座禅会に行ってるけど、全然ダメなのよ。瞑想はやってみたいけど、料金が異常に高いし怪しいから手を出してない。」という話をすると、「ヴィパッサナー瞑想いいよ。料金は自分で納得した寄付だけだし。」と初めてヴィパッサナーの話になりました。
その子の話によると、ヴィパッサナー瞑想ができる施設は千葉と京都にあるとのこと。
東京からなら千葉が近いね。
行ってみたいなと思いつつ、10日間の休みが取り辛くて1〜2年は躊躇していました。
その後、運良く夏休みと有給を利用して10日間の休みが取れることになり、初めてヴィパッサナー瞑想センターへ行くことになります。
初めて10日間コースを受けた時のこと
当時、千葉のセンターは今と違って部屋数も少なく、暖房器具も整っていなくて、冬は凄く寒いという噂でした。
寒さに弱い私は、「行くなら夏しかないな。」と思っていたので、休みが取れた時は嬉しかったです。
10日間、全く喋らない生活
コース期間中は喋ることも、人と目を合わせてアイコンタクトすることも禁止なのですが、これが私には非常に気が楽でした。
初対面の人たちと共同生活する場合、まずは自己紹介から始まって「どこから来られたんですか?」「初めて来られたんですか?」とか、何か話さなきゃと思いますよね。
一人でポツンと居る人を見ると「声をかけようかな。それとも一人で居たいタイプかな。」と気を遣うし。
そういうのが一切必要ないというのは、とても気が楽でした。
人と口をきかなくても良い生活はとても楽だったのですが、黙っていると人のことを自然に観察するようになります。
今、思えば、初めての10日間コース参加の時は雑念だらけでしたので、尚更人のことが気になったんだと思います。
自己紹介もしていないので、隣の人の名前も知りません。
日を追うにつれ、周りの人に心の中で、あだ名をつけるようになってきました。
・ペリカン(顎がしゃくれて、まばたきが少ない方に)
・ビーバー(出っ歯の方に)
・大食いチャンピオン(毎回、食堂ですごい量のご飯をついで、お代わりする方に)
・こけし(色白、おかっぱ、目が細い方に)
・酋長(インディアン風色黒、ロン毛の男性に)
今思えば、失礼千万。でも名前知らないとこうなっちゃうんですよね。
後で聞いたら、私もあだ名つけられてました。
隣の女の子は私に「ひろ子さん」というあだ名をつけていたそうです。
線が細くて、色白で、印象の薄い雰囲気が、その子の中では「ひろ子さん」だったそうです。
わかるような気もする…。
私はその子に「みなしご」というあだ名をつけていたことは、口に出しませんでしたけど。
そんな感じで初めての10日間コース参加の時は、雑念だらけでした。
10日間コース 1日目〜5日目
・1日目
1日目は座ることにも慣れていないので、足が痺れる、腰が痛いと身体的な苦痛が気になって仕方ありませんでした。
これでは座禅の時と同じだ。
でも途中でやめようとは思いませんでした。
自分一人だったら、多分やめていたと思います。
意地でも10日間やりきろうと思えたのは、ボランティアの方々のお陰です。
ご飯を作ってくださる方、コースマネージャー、指導者、全ての方が無償で私たちが瞑想に集中出来る環境を作るため、細かい気遣いで目を配って下さっている。
それをコース参加中、強く感じました。
夏の暑い時期なので、脱水症状にならないよう、コースの途中から給水場に塩レモン水がが置かれる。
コースマネージャーからは、責任を果たそうという気合を感じました。
無償のボランティアで、どうしてここまでできるのかな?
それを思うと、途中でやめる気持ちにはならなかったです。
これが営利目的で運営されている組織の瞑想コースなら、こんな気持ちにはならなかったと思います。
払ったお金に対する対価を私も得て当然と思うだろうし、それに見合わないサービスとクオリティーならクレームを出したと思います。
ヴィパッサナー瞑想センターでは、サービスではなく、全ては無償奉仕だからこそ、こちらも感謝の気持ちが湧いてきたのだと思います。
・2日目〜5日目
2日目〜5日目も雑念だらけでしたが、なぜか、異常に腹が立って仕方がありませんでした。
ムクムクと怒りが湧いてきて、大昔のもう忘れていた事を頭の中で何度も反芻してしまいます。
「あの時、あんな事を言われたけど、こんな風に言い返せば良かった。」とか、「あの人はあんな事を言ってたけど、あれおかしいんじゃない?」とか、エンドレスで怒りがぐるぐる回るのです。
それも取るに足らない小さなことまでほじくり返して思い出しては「あれはおかしい。」とか「あの人はこういう傾向がある」とか、ひたすら他人をジャッジしてしまう。
ヴィパッサナー瞑想では、感情が出てきたら冷静に「今、怒っている」とラベリングすることで感情を流し、また感覚に集中して行くのですが、私は出てきた怒りの感情にはまって、グルグルと感情の渦にどっぷり浸かってしまいました。
これでは瞑想になってないと言えると思いますが、自分が思っている以上に怒りを溜めているんだとわかりました。
とにかく1日目〜5日目までは、呼吸や感覚に集中するまで行かず、ひたすら怒っていました。
・6日目〜10日目
6日目以降は怒り疲れたのか、だんだんと怒りの感情はなくなってきました。
その代わり、ひたすら眠いんです。
夜にしっかり寝たはずなのに、気がつくとコックリコックリと舟を漕いでいる。
「あ、寝てしまった。感覚に集中しよう。」と思った1分後には、もうコックリコックリ。
寝ないように気合を入れても入れても、次の瞬間にはもう寝てる。
これは無意識に、瞑想から逃げようとしているのか?
眠くなった時は「眠気」とラベリングして、また瞑想を続けることが大切なのですが、その間もなく意識が落ちてコックリコックリしてしまうのです。
結局、最後まで眠気には勝てず、コックリコックリを続けながら最終日を迎えてしまいました。
こんなの私だけかな?とがっかりしていたら、どうも眠くなってしまう人はたくさんいるようです。
周りを見ても、結構ウトウトきてる人がいたし、指導者がウトウトしてるのを見ることもあります。
あまりにも瞑想ができない自分にがっかりして、瞑想から帰って「ブッダの瞑想法」というDVDブックを買いました。
この本の中に、眠くなった時の対策がいろいろ書いてあって参考になりました。
瞑想コース中の講話はとても良いのですが、観念的な話も多く、具体的なアドバイスが少ないです。
この本は読みやすいし、実践的なアドバイスが書かれているので、ヴィパッサナー瞑想に参加したことがある人にはとても良い本だと思います。
ただヴィパッサナー瞑想コースに参加したことのない方が、独学でこの本とDVDだけで学ぶのは難しいかも。
ヴィパッサナーは呼吸と感覚にのみ集中するという難しい瞑想法なので、一から独学というのはなかなか難しいと思います。
10日間コース中に聞いた体験談
コース終了後、食堂でみんなで昼食をとります。
コースが終了して初めて話してもOKになるのですが、その時の開放感がすごいです。
特に女性側は蜂の巣をつついたように、バーっと喋り始めます。
男性側の席との対比がすごいですよ。
女の人は喋るのが好きなんですね。
3日間コースの時はそれほどでもないですが、10日間コースの後はすごかったです。
いろいろな人の瞑想体験を聞きました。
・その1
隣の女の子に「瞑想の時、ずっと体を前に倒してお腹痛そうにしてたね。どうしたの?」と聞いたら、「お腹がナイフで刺されたように、もの凄く痛くなった。」と言っていました。
ナイフで刺されたような痛みって、凄いですよね。
明らかに体調不良とかじゃなくて、瞑想中にだけそんな風に感じたそうです。
指導者に相談したら「痛みがある。」とラベリングして流しなさい。と言われたそうですが、とても流せるような痛みではなかったそうです。
3日間くらいずっとナイフで刺されたような痛さが続いて、そのあと消えたそうです。
・その2
瞑想中に指導者が一人の男性に駆け寄り、肩を揺すりました。
後で聞いたらその男性「ど真ん中行ってました。」って。
ど真ん中ってどんな感じか分かりませんが、何だか凄そうです。
・その3
身体の感覚をず〜っと見ていくと、自分の皮膚の表面と空気の接地面が、じわじわとした温かい光みたいなもので覆われているような、空気面と皮膚の表面が混じり合うような、キラキラしたものに包まれたようなもの凄く気持ちよい感覚に包まれた気がした時があった。
これまた私には凄い体験に思えました。
ひたすら怒って、眠いだけだった自分とのギャップに、うっすら落ち込みそうになります。
でも人と比べる必要は、全然ないですよね。
私は特別な体験はありませんが、瞑想後はいつも穏やかな気持ちになれるし、ボランティアの方々のお陰かもしれないけど、感謝の気持ちがいつもより強くなって、晴れやかな気分になります。
ヴィパッサナー瞑想では、日常でも少しずつ瞑想する時間を持つことを推奨しています。
忙しい毎日ですが、少しずつ続けていきたいと思います。